白ゆき姫殺人事件は、湊かなえさんの手による活字という媒体の限界に挑んだ、新感覚エンタテイメント小説です。通常の小説と違い、本編以外の参照だけで、300ページの約1/3も使っているのですが、読書した後で参照ページ(ネットのブログ等の書きこみ等)を読む事で、より小説の世界感の深みを知る事になります。
本編だけでも十分面白い作品となっていますが、参照ページを読む事によって、人間の怖さをより実感する事になります。白ゆき姫殺人事件、映画化にもなっていますが、本を読むとちょっと観たくなります。本ならではの手法が映像化で何処まで通用するのか、楽しみです。
白ゆき姫殺人事件 あらすじ
白ゆき姫殺人事件、冒頭からいきなり、インタビューのやり取りを活字化するという構成ではじまります。化粧品会社に勤める美人OLが山の中で黒こげの遺体となって発見されるのですが、その関係者が次々とフリー記者に語っていく構成で話が進んでいくのです。
そこで、容疑者として名前があがったのは、被害者と同じ化粧品会社に勤めるOL城野美姫、関係者からの聞き込み調査が進むにつれ、城野美姫犯人説が濃厚になって来るのですが、果たして本当にそうなのでしょうか?他に真犯人はいるのでしょうか?
ネットの匿名性という社会問題を見事に表現した作品、
白ゆき姫殺人事件、悪意の怖さを知る事になります。
白ゆき姫殺人事件 感想
白ゆき姫殺人事件の面白いところ、本文の中で次々と取材を行い話を進めていくフリー記者の赤星が語るシーンがなかったりして、小説としては斬新です。おまけページの存在も、ただの参考資料だと思っていたら、すべての謎が解けてから読んでみて、こういう解釈なのかと改めて実感する部分もあります。
殺された三木典子がどういう人物だったかもすべて他人からの印象になっており、語る人間によって、その人物像が全く違います。この手法、何かに似ているなと思っていたら、思い出しました・・・宮部みゆきさんの傑作小説『火車』、真犯人の実像に迫る小説で、白ゆき姫殺人事件とは全く内容も違う小説なのですが、殺された三木典子が『火車』の真犯人とダブっているように感じるのです。
両者とも、語られるのは第三者からのみ、実際の人物像はどうだったのでしょうか? まあ、人物像というものだって、本人の自覚と他人からの評価は全く違うものですから、あてにはなりませんが、それにしても白ゆき姫殺人事件は、悪意に満ちた作品です。
白ゆき姫殺人事件を読むと、ネットの匿名性が社会問題になっているのが良くわかります。偽善者をよそおって、なんでも出来るという怖さを改めて実感しました。
それにしても、作者の湊かなえさん、人間の心理が良く分かっていらっしゃる、あえてインタビュー形式の質問に答えるという手法をとる事によって、真実を誇張して話したり、集団の意見に従ってしまう弱さなど、説得力のある展開に引き込まれるのです。
本が苦手な方でも、このような形の小説であれば、スイスイ読めていけるのではないでしょうか?まさに新感覚のエンタテイメント小説、白ゆき姫殺人事件、女性は怖いですね。
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