『そして父になる』本屋さんで立ち止まって目にした紹介文、映画の余白を埋めていく、文字で紡がれる、家族それぞれの物語。
その言葉に惹かれて、思わず手にしてしまった『そして父になる』の読書感想です。映画を先に観ていますので、結末は先に知っていますが、それでも十分読み応えのある作品でした。
また、驚くべき事に、『そして父になる』原作者はおりません、映画製作時に脚本家であった佐野晶さんと、監督 是枝裕和の共同執筆となった小説があるだけです。
そして父になる 小説 あらすじ
人生に勝ち組と負け組という言葉が本当にあるとするならば、学歴、仕事、家庭と誰もが羨む生活をおくっている良太。
その生活は盤石だと思っていたある日、病院から突如告白された内容は、6歳児になる息子の慶太は、病院で取り違えられた他人の子供であるという事実。
常に上昇志向の良太、こんな事態になっても最善の選択を実行しようと動くのですが、息子の存在を真剣に見つめ直すうちに、己の過去と向き合い、そして父としてあるべき心境にたどりつくのです。
そして父になる 読書感想
『そして父になる』の小説、映画で内容を知っていても十分楽しめる作品です。読みやすくわかりやすい内容は、映画の各シーンが頭に浮かぶようです。
小説ならではの要素が、活字媒体として輝いています。文字で書かれる事によって、視覚では観る人の判断にゆだねられている部分が明確になります。
例えば、各家族の紹介文章、野々宮良太、野々宮みどり、斉木雄大、斉木ゆかり、野々宮慶太、斉木硫晴、主要6人の描写が克明に描かれています。
小説と映画の中味が全く違っていたり、最後のオチが映画だと替えられている作品が多い中、ここまで映画の内容に忠実な小説にビックリです。
文字通り、映画では表現が難しい心理描写が見事に補完され、映画の余白を埋めた小説となっています。といっても、映画の完成度が低いと言う事でもなく、小説の内容通りの演技であった事が、改めて実感させられる部分もあります。
福山雅治、リリー・フランキー、他キャストの改めて演技力の高さを再認識です。
映画ではふれる事なかった子供取り違えの賠償金額の部分なども、小説ではある程度、金額が分かるように書かれておりますよ。
『そして父になる』映画で感動した方には、間違いなくお勧めできる小説になりますし、映画の内容が少しわかりずらかったと言う方にも、よりわかりやすく表現したある媒体ですので、同じくお勧めです。